研究概要 |
心臓移植において,ドナー不足による症例数の限界は明白であり,これを解決する手段の一つに異種ドナーの開発がある.異種の組み合わせのうちでも,concordantと呼ばれる比較的近い場合においては,細胞性の免疫反応が拒絶反応を司ることが報告されている.しかし,その詳細は明らかではなく,制御方法は確立されていない.今回,異種抗原に対する細胞性免疫応答を制御すべく,まずは抗異種抗原T細胞応答機構を解析した.そして,以下の抗異種抗原反応性T細胞サブセットの特徴を明らかにした. 1)抗異種抗原反応性T細胞サブセットには,CD4及びCD8 T細胞サブセットが存在した. 2)抗異種抗原反応性T細胞サブセットには,自己の抗原提示細胞を介して異種抗原を認識するサブセットのみならず異種の抗原提示細胞を介して異種抗原を認識するサブセットが存在した. 3)2)の異種抗原提示細胞拘束性サブセットの中にCD4のみならずCD8 T細胞が存在した. 4)3)の異種抗原提示細胞拘束性CD4あるいはCD8 T細胞サブセットは,それぞれ異種クラスIIあるいはクラスI主要組織適合抗原を直接認識していた.またこれらの特徴を持ったT細胞クローンの樹立に成功した. 以上の解析結果は,同種抗原の場合に報告されているT細胞機構によく類似している.従って,現在実験的あるいは臨床において報告されている同種移植片拒絶反応の制御方法が,いくつかの部分は異種の場合においても用いることが可能であることを示唆している.
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