現在までに、好中球側の接着分子を抗体にてブロックすることにより、低酸素下の血管内皮細胞の障害が軽減されるか否かを検討してきた。 1)抗ヒトCD11b抗体がウシ好中球と反応することを蛍光抗体法を用いて確認した。 2)我々の作製したバイオアッセイ系を用い、抗CD11b抗体と反応させたPMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)にて刺激した好中球を低酸素下のウシ血管内皮細胞とincubareし、再酸素化後のEDRFの産生、放出能を血管平滑筋の弛緩率にて評価した。抗体を用いない群はコントロール群(好中球無添加)に比べ90%の弛緩率の減少を見たが、一方、抗体使用群は10%の弛緩率の減少を認めた。すなわち、抗CD11b抗体にてほぼ好中球と内皮細胞の接着がブロックでき、内皮細胞からのEDRFの産生、放出能が保たれ得ることを証明した。 上述した如く、低酸素再酸素化血管内皮細胞の好中球による障害は内皮細胞と好中球とのdirect interaction、すなわち、細胞接着によって生ずることを抗CD11b抗体を用い細胞レベルで証明した。更に、抗ICAM-1抗体を用い低酸素下におけるICAM-1の発現量を定量し、内皮細胞側の接着分子をブロックすることによる内皮細胞の保護効果を検討することも今後の課題である。一方、ヒト材料を用い検討する必要があるが、ヒト冠動脈を新鮮材料として用いることは不可能である。従って現在は、抗ヒトCD11b及びCD18抗体、ヒト肺動脈、ヒト肺動脈、ヒト肺動脈内皮細胞、ヒト好中球を用いることにより、ヒト材料にて統一し肺における虚血再灌流障害を検討している。これらの実験は平成8年度までに終了し、報告する予定である。
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