心筋虚血再潅流障害をヒト材料を用いて実験的に検討するのは困難であるため、ヒト肺材料をを用いて検討した。 肺の虚血再潅流障害を検討するにあたり、肺手術摘出標本より得られた肺動脈、培養ヒト肺動脈内皮細胞、ヒト好中球を用いたバイオアッセイシステムを作成した。抗CD11bおよびCD18抗体が内皮細胞の虚血再藩流障害を軽減するかを検討した。 1)フローサイトメトリーを用い、抗CDllbおよびCD18抗体の好中球との結合能を検討したところ、10ug/mlの濃度でそれぞれ約70%のmean channeel fluorescence ratioを得た。それ以上の濃度でもこの割合はほとんど増加しなかったので抗体濃度は10ug/mlを用いる事とした。 2)バイオアッセイシステムにおける虚血再潅流時の肺動脈リング標本の弛緩率は50.3±2.0%であるが、活性化好中球を内皮細胞に添加すると弛緩率は19.7±1.0%まで減少した。しかしながら、活性化好中球を30分間抗CD11bおよびCD18抗体とincubateし、これを内皮細胞に添加した群では弛緩率は前者では40.9±1.0%、後者では41.8±1.7%まで弛緩率の改善を認めた。 以上の如く、肺の虚血再潅流障害は血管内皮細胞と好中球のinteractionを阻害することにより軽減され、その手段として好中球の内皮細胞に対する接着分子CDllbおよびCD18を抗体を用いてブロックすることが有用であることを細胞レベルの実験で証明した。 しかし、完全には虚血再潅流障害を防ぐことができず、他の因子(EDHFなど)の関与も考えられ、更なる研究が必要と考える。 本研究は現在投稿中である。
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