1)虚血再灌流障害の発生機序としての血管内皮細胞と白血球のdirect interactionをin vitroの実験系において証明した。従来より用いている実際材料としてウシ大動脈培養内皮細胞、ウシ白血球、ラット大動脈平滑筋にてバイオアッセイモデルを作製した。好中球の接着分子抗体として抗ヒトCD11b抗体と抗ヒトCD18抗体を用い、まず、フローサイトメトリーにてウシ白血球とそれぞれの抗体のbinding assayを行った。両抗体ともに約65〜70%のsaturationを示した。これらの抗体をPMAにて活性化した白血球と30分間incubateし、低酵素化下のウシ大動脈培養内皮細胞に添加した。5分後に再酸素化し、内皮細胞障害の程度をnitric oxideの分泌能にて評価した。評価方法としてはラット大動脈平滑筋の発生張力の等尺弛緩率にて計測した。control群:51.5±2.4%、PMA-treated WBC群:8.9±1.3%、抗CD11b抗体群:24.1±3.7%、抗CD18抗体群:20.8±2.5%と両抗体群ともPMA-treated WBC群に比べ弛緩率は有意(p<0.05)に改善した。 しかし、control群に比べ50%弱の改善が認められたにすぎず、その一因として異種の材料を用いているためと考え、すべての材料をヒト由来に統一することにより同様の実験を行った。 2)実験材料としてヒト肺動脈由来培養内皮細胞、ヒト好中球、ヒト肺動脈平滑筋にてバイオアッセイモデルを作製した。好中球の接着分子抗体として抗ヒトCD11b抗体と抗ヒトCD18抗体を用いた。フローサイトメトリーでは好中球に対し、前者では72.4±5.6%、後者は71.8±3.9%のsaturationを示した。バイオアッセイモデルにおけるヒト肺動脈平滑筋の発生張力の等尺弛緩率はcontrol群:50.3±2.0%、LTB4-treated neutrophil群:19.7±1.0%、抗CD11b抗体群:40.9±1.0%、抗CD18抗体群:41.8±1.7%と両抗体群ともLTB4-treated neutrophil群に比べ弛緩率は有意(p<0.001)に改善した。また、control群に比べ約80%の改善を認めた。 我々の今回の研究では肺虚血灌流障害の発生原因として血管内皮細胞と好中球のdirect interactionがその主であり、これは好中球の血管内皮細胞への接着分子抗体である抗CD11b抗体と抗CD18抗体により約80%は軽減できることをin vitroの実験系にて証明した。
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