研究概要 |
WKAH(ドナー)-F344(レシピエント)の組み合わせでラット左肺移植を施行した。 術後早期のみ免疫抑制(FK502 0.3,1.0,3.0mg/kg/day)を使用し、その後中止すると、術後3カ月目には気管支周囲に細胞浸潤を伴った、軽度拒絶反応を認めた。しかし、更に免疫抑制剤を使用せず術後6カ月まで観察したものでは、気管支周囲の細胞浸潤は軽快しており、OB(Bronchiolitis obliterans)像も認めなかった。 FK50を移植後5日目から3.0mg/kg/dayを短期間投与した群では、術後6カ月の時点で、気管支周囲に細胞浸潤を伴った軽度拒絶反応を50%に認めたが、典型的なOB像は認めなかった。即ち、肺胞構造は良く保たれており、細胞浸潤を伴う気管支も末梢レベルの細気管支より中枢の比較的太い気管支であった。この気管支周囲の細胞浸潤所見は同一レベルと思われる同じ太さの気管支でも認めないことがあり、パッチ状に認められた。 免疫抑制剤を全身投与せず、ステロイド吸入のみの群では長期生存例は得られなかった。 まとめ:所謂、OBの所見とは、病変の存在する気管支レベルが異なり、肺胞腔、終末細気管支での肉芽増殖や閉塞所見を認めなかった。今回の移植肺気管支に認められた部分的な単核球浸潤は、気管支動脈周囲に多い認められており、この所見は慢性期移植肺拒絶反応時における、肺内気管支の血液循環の変化を示唆するものとも考えられ、更に末梢側の細気管支のリモデリングに対しても関与するのではないかと考えている。今後、観察期間、移植ラットの組み合わせ及、免疫抑制剤のプロトコールの変更により、さらにOBに近い所見の得られる、モデルを研究したい。
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