研究概要 |
平成7年度はラット左肺移植を施行し、免疫抑制剤の減量投与を行ったが、OB像は観察されなかった。そこで、平成8年度は、サイクロスポリン投与により移植片が生着した系にrIL-2を投与し、急性拒絶反応を繰り返し発生させるモデルを作り、その組織像を検討した。方法;BNラット(RTl^n)→LEWラット(RT1^1)の異所性(大網内)気管移植モデルを用いた。1群:免疫抑制剤非投与、2群:術後2,3日目にサイクロスポリン25mg/kg筋注、3群:2群と同様の処置後、rIL-2を腹腔内投与、の3群を作成した。rIL-2は、術後1、2週目または2、3週目に、1,000単位、9,000単位、40,000単位、100,000単位、200,000単位を5日間連続で腹腔内投与した。結果1群:気管上皮は剥脱し、気管内腔は線維芽細胞の増殖と結合織の増生により、ほぼ完全に閉塞。2群:線維芽細胞の増殖と線維の増生は無く、気管内腔は、ほぼ完全に開存。3群:rIL-2投与量が1,000、9000単位/回では、2群と同じく気管内腔の閉塞像はなく、気管上皮も保たれていた。1回投与量が、4万単位以上では、気管上皮の消失と、気管内腔の線維芽細胞の増殖と結合織の増生による閉塞像を認め、1群と同様の所見であった。まとめ;本実験では、大網内気管移植において認められる気管内腔閉塞像は、サイクロスポリンの投与により抑制されることより、拒絶反応によるものであること、rlL-2の投与によりサイクロスポリンによる免疫抑制作用がリバースされ、拒絶反応が誘発されることが確認された。今回の大網内気管移植による気道閉塞所見が、その発生機序に拒絶反応が関与した物であり、病理学的にOBの細気管支閉塞像に類似している。今後、同様のプロトコールで、左肺同所性移植モデルでの慢性拒絶反応(特にOB像)発生を確認する必要がある。
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