研究概要 |
移植肺慢性拒絶反応(閉塞性細気管支炎;OB)発生モデルを作製することを目的とした。まず、異系ラット左肺同所移植後、サイクロスポリン(CyA)を2週間のみ15mg/kg日投与し、その後14週間免疫抑制剤を中止し、慢性期の移植肺組織像を検討したが、OB像は観察されなかった。また、免疫抑制剤の種類、投与量、投与開始日を変えても、移植後慢性期の移植肺にはOB像は観察されなかった。これは、ラットが移植後短期間の免疫抑制剤投与により容易に免疫寛容状態になるため、免疫抑制剤の中止後も急性拒絶反応が発生せず、OB発生の免疫学的機序が働かなかった為と推測された。そこで、CyAの主な免疫抑制作用がIL-2抑制によることから、CyA投与により免疫寛容状態になった異系肺移ラットにrIL-2を投与し、急性拒絶反応を繰り返し発生させ得ると考え以下の実験を行った。方法;BN→LEWラットの大網内気管移植モデルを用い、I群:免疫抑制剤非投与、II群:術後2,3日目にサイクロスポリン25mg/kg筋注、III群:II群と同様の処置後、rIL-2を腹腔内投与、の3群を作成した。rIL-2は、術後1、2週目または2、3週目に、1日量を1,000単位、9,000単位、40,000単位、100,000単位、200,000単位のいずれかで5日間連続腹腔内投与した。結果;I群:気管内腔はほぼ完全閉塞。II群:気管内腔は、ほぼ完全に開存。III群:rIL-2投与量が14万単位/回以上で、気管閉塞像を認めた。まとめ;異系大網内気管移植の気管内腔閉塞像は、拒絶反応によるもので、riL-2の投与でサイクロスポリンによる免疫抑制作用がリバースされ、拒絶反応が誘発された。rIL-2投与により、異系ラット左肺同所移植においてOB発生モデルを作製できる可能性が示唆された。
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