手術で採取した癌組織と術直前に採血したリンパ球を用いて、もっとも有効な免疫賦活剤を選択する目的で各種免疫賦活剤負荷時の自己リンパ球のATK活性・NK活性の測定を3例に行った。第1例は大腸癌の肺転移症例で、いずれの免疫賦活剤をリンパ球に投与した場合もATK活性は5%以下の低値であったが、NK活性はインターロイキン2投与時に10%以上の高値を示し、インターロイキン2の投与が臨床的にも有効であろうと推測された。第2例は原発性肺癌症例(扁平上皮癌)で、免疫賦活剤を投与しない状態でもATK活性は5%を軽度上回る陽性値を示し、予後良好が推測された。なお、本症例では各種免疫賦活剤を投与する実験は行えなかった。第3例は原発性肺癌症例(腺癌)で、OK-432投与時に、ATK活性・NK活性ともに軽度上昇を示し、OK-432の臨床での有効性が推測された。症例数はまだ少ないが、2例で有効な免疫賦活剤の選択が行い得たことにより、本方法の臨床への応用が可能であると考えられた。今後は、上記の検討を進めるとともに、腫瘍特異的キラーT細胞の誘導活性化に直接関与するリンホカイン、細胞表面分子あるいはシグナルパスウェイを調べるため、末梢血リンパ球および腫瘍内浸潤リンパ球と腫瘍細胞の共培養にIL-2、IL-6、IL12、TNFα、INFγ等のリンホカインを添加しその腫瘍細胞障害能の増強の有無を検討し、TCRαβ、CD3、CD4、CD8、CD80、CD86に対する抗体を添加しその抑制を試みる予定である。
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