研究概要 |
ストレス(熱ショック)応答は、主として転写レベルで調節されており、その転写調節は、主にプロモーター領域のHeat Shock Element(HSE)への熱ショック転写因子(Heat Shock Factor; HSF)の結合によるものである。虚血心におけるストレス蛋白質誘導のメカニズムを探るために、S-Dラットの摘出灌流心(Langendorff法)における、全虚血時(2〜60分)及び虚血後再灌流時(10〜40分の全虚血後、再灌流10〜60分)のサンプルを採取し、HSFのHSEに対するDNA結合能の活性化をゲルシフト分析で調べた。更に、これらのサンプルの熱ショック蛋白質HSP70及びHSP90のmRNAレベルをノーザンブロットで調べた。 全虚血のみでは、活性化は弱く、20分後には減衰し始めたが、その後再灌流を行うことにより活性化が増大した。更に、虚血再灌流を繰り返すことにより、強い活性化が得られた。抗HSF1,HSF2抗体を用いたゲルシフト分析により、高温ストレス時や虚血再灌流時に心臓で活性化されるHSFは、HSF1であることがわかった。ノーザンブロットで、HSP70及びHSP90のmRNAも虚血のみではほとんど誘導されなかったが、再灌流を行うことにより強く誘導された。また、再灌流時のmRNAレベルは、高温ストレス時に比し、HSP70では低かったのに対し、HSP90は明らかに高かった。 虚血心においても、HSF1の活性が認められ、多くの高等動物細胞の他のストレス時と同様なストレス遺伝子の転写調節が行われており、虚血心では、特に虚血後再灌流がストレス応答の誘導に重要であることが明らかとなった。
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