研究概要 |
[背景と目的]心や膵の臓器移植において、急性拒絶反応時に一酸化窒素(NO)の産生が増加することが報告されている。肺移植においてNOが拒絶反応の指標となりうるかを明らかにするために、ラット肺移植モデルを用い、異系肺移植における拒絶反応時に呼気中および気管支肺胞洗浄液(BAL)中細胞産生のNOが増加するか検討した。 [方法と結果]実験1として、3群のラット同所性片肺移植(異系無治療群:Brown-Norway to Lewis,異系サイクロスポリン治療群,同系群:Lewis to Lewis)において。呼気中のNOを移植後3、5日めに測定した。呼気中NOは、3日目には各群間で差はなかったが、5日目には異系無治療群で63.9±39.2,異系サイクロスポリン治療群で9.1±1.6,同系群で6.9±0.5ppbであり異系無治療群で有意に(p<0.01)高値であった。また呼気中NO濃度は、組織学的拒絶反応の程度と有意に(p<0.01)正の相関を示した。実験2として、2群のラット同所性片肺移植(異系無治療群:Brown-Norway to Lewis,同系群:Lewis to Lewis)において、移植後3、5日めに回収細胞(回収後3時間培養)の産生NOを測定した。移植後3日目に異系無治療群で11.6±2.5ppbで、同系群での測定感度以下に比して有意に(p<0.01)高値を示し、5日目には拒絶の進行に伴い195.4±154.7ppbとさらに上昇した。 [結論]以上の結果より、呼気中のNOは、異系肺移植後の拒絶反応の指標となる可能性がある。またBAL回収細胞産生NOは呼気中NOより、より鋭敏な拒絶反応の指標となる可能性がある。
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