研究概要 |
[背景と目的] 肺移植後の慢性拒絶反応は遠隔期の死因の主因である。その機序は明らかにではないが急性拒絶反応の程度や頻度が危険因子とされることから、急性拒絶反応の早期診断・治療が重要であると考えられる。心や膵の臓器移植において急性拒絶反応時に一酸化窒素(NO)の産生が増加することが報告されているため、肺移植においてNOが拒絶反応の指標となりうるかを明らかにすべくラット肺移植モデルを用い異系肺移植における拒絶反応時に呼気中および気管支肺胞洗浄液(BNL)中細胞産主のNOが増加するか検討した。 [方法と結果] 平成7年から8年度にかけては実験1として、3群のラット同所性片肺移植(異系無治療群(Brown-Norway to Lewis),異系サイクロスポリン治療群,同系群(Lewis to Lewis))において、、呼気中のNOを移植後3、5日目に測定した。呼気中NOは、3日目には各群間で差はなかったが、5日目には異系無治療群で63.9±39.2,異系サイクロスポリン治療群で9.1±1.6,同系群で6.9±0.5ppbであり、異系無治療群で有意に(p<0.01)高値であった。また呼気中NO濃度は、組織学的拒絶反応の程度と有意に(p<0.01)正の相関を示した。次いで、平成8年から9年度にかけては実験2として、2群のラット同所性片肺移植(異系無治療群(Brown-Norway to Lewis),同系群(Lewis to Lewis))において、移植後3、5日目にBAL回収細胞(回収後3時間培養)の産生NOを測定し、さらにiNOSに対する免疫染色を行った。移植後3日目に異系無治療群で11.6±2.5ppbで,同系群での測定感度以下に比して有意に(p<0.01)高値を示し、5日目には拒絶の進行に伴い195.4±154.7ppbとさらに上昇した。マクロファージ、リンパ球、好中球にiNOSが染色された。 [結論] 以上の結果より、呼気中のNOは、異系肺移植後の拒絶反応の指標となる可能性がある。またBAL回収細胞産生NOは呼気中NOより、さらに鋭敏な拒絶反応の指標となる可能性がある。
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