研究概要 |
ラット移植肺モデルを用い、肺移植後の拒絶反応時のサイトカイン産生状況を検討し、以下の結果が得られた。 RT-PCR法を用いた各種サイトカインmRNAの発現状況の検討:vascular phaseにはIL-1β;IL-6,IL-2の発現増強が見られた。alveolar phaseになるとTNFα、IFNγ、IL-10の発現増強が認められる。IL-1β,IL-6,IL-2は拒絶反応の進行とともに、その発現はむしろ抑制される傾向を示した。移植後早期のIL-1β,IL-6の発現増強は、re-implantation responseが原因と考えられた。慢性拒絶肺ではIL-1β,TNFαおよびIL-2の発現増強が認められた。 免疫組織学的検討:ラットにおいて免疫組織検討の可能なTNFα、IL-1β、IFNγおよびIL-4の産生を観察した。 【急性拒絶過程の検討】急性拒絶過程の検討移植後早期1日目(latent phase)においてもTNFαは静脈周囲の単核細胞に認められ、経時的にTNFα産生細胞は増加傾向を示した。IL-1β産生細胞はTNFα産生細胞に遅れて出現[移植後3日目(vascular phase)]したが、拒絶が進行しても陽性細胞は増加しなかった。IFNγは移植後3日目(vascular phase)より、静脈周囲浸潤細胞中に同定され、移植後5日目(alveolar phase)では陽性細胞は増加した。IL4陽性細胞もIFNγと同様な動態を示した。 【慢性拒絶肺中の浸潤細胞におけるサイトカインの産生状況】 気管支周囲細胞浸潤を認める部位にTNFα産生細胞の集団を認めた。同部位の気管支粘膜にはMHCクラスII抗原の発現を認めた。IL-1β産生細胞は少数認められたが、IFNγ、IL-4産生細胞はほとんど認められなかった。 免疫抑制剤の効果:サイクロスポリン投与によりIL-2mRNAの発現が著明に抑制され、急性拒絶時には移植後5日目でピークレベルを示すTNFαおよびIFNγの発現も抑制されていた。しかし、IL-1βはサイクロスポリン投与後もその発現は抑制されなかった。
|