研究概要 |
平成7年度に10例の腹部大動脈瘤につき,腹部大動脈の血管遮断前後の血中スーパーオキサイド,ミオグロビン等を検索した。 結果は遮断前後に好中球スーパーオキサイド産生はNBT還元法において有意の変化を認めるに到っていないが,ミオグロビンは遮断時間に比例して増加しており,著しい場合は2000ngを超える症例も認められた。 また遮断前後で下肢静脈の乳酸値の有意の上昇を生じ,これら嫌気性代謝産物増加によると思われる代謝性アシドーシスを来している症例も散見された。数例で腎動脈分岐上部にての遮断も行われたが,これらでは代謝性アシドーシスが顕著であることから,腎虚血そのものおよびミオグロビン等の代謝産物増加が術後の腎不全および多臓器不全の原因となることが予測された。事実術後に腎機能低下した症例もあり,今後はいかに下肢の血流を良好に保って大動脈遮断を行うかという予防面とミオグロビン対策につき研究を続ける予定である。とくに術中上半身より下肢へのバイパス造設の効果を検討することを主眼点としたい。
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