研究概要 |
心大血管手術後IABPを必要とした重症心不全のうち9症例に、表面冷却による低体温を導入して良好な成績を得た.術式は,冠動脈バイパス術(CABG)3例,大動脈弁置換術(AVR)2例,CABG+僧帽弁置換術(MVR)後の左室破裂に対する破裂部修復と再弁置換術1例,CABG+MVR1例,AVR+MVR+三尖弁弁輪形成術1例,上行弓部部分置換術1例であった.低体温の導入基準は,カテコラミンの大量投与,IABPの補助にも拘らず,肺動脈楔入圧18mmHg以上で心係数2.0L/min/m^2以下とした.混合静脈血酸素飽和度50%を目標とし,血液温を32〜35°Cに維持した.低体温期間中重篤な不整脈は認められず,全例で低体温管理およびIABPから離脱し,9例中6例が生存し社会復帰している. 心拍数,平均動脈圧は低体温導入前,中および離脱時で変化は認めなかった.末梢血管抵抗は低体温導入により低下する傾向にあり,低体温離脱時は導入前に比べ有意の低下で正常化した.肺動脈楔入圧も低体温導入により低下する傾向にあり,低体温離脱時の値は導入前に比べ有意に低下した(前18.4±2.1,中15.4±3.3,離脱時14.8±4.3mmHg).心係数は低体温導入により若干の改善はみられるがほとんど変化はなく,低体温離脱時は有意に改善した(前1.70±0.32,中2.04±0.42,離脱時3.11±0.48L/min/m^2)、Svo_2は低体温導入により有意に改善した(前42.8±6.2、中58.2±5.1,離脱時64.6±3.7%).酸素消費量は低体温導入前に比べて導入後で有意に減少した(前218±33,中177±28,離脱時239±43mlO_2/min). 表面冷却による低体温管理は容易で,IABPによる循環補助限界症例でVAS使用前に用い得る一方策と考えうる。
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