研究概要 |
教室では遠心ポンプの特性を利用した遠心ポンプ用搏動流装置(PAD・CP)の開発を行ってきたが、モックサ-キュレーションシステムを用いたin vitro testおよび犬を用いてのin vivo testにおいて、血行動態的にはほぼ満足すべき結果が得られた。そこで今年度は本装置駆動による溶血について検討した。まずin vitro評価を溶血テスト用回路を作成して行った。回路は太さ3/8インチ、全長約330cmのポリ塩化ビニールチューブにリザーバーを2個、遠心ポンプ(Biopump,model 80)およびPAD・CPを直列に接続した。PAD・CP駆動中の後負荷は、100-140mmHgとした。回路内の充填血は屠殺時に採取した牛血を使用した。充填量は2400mlであった。ポンプ流量2L/min、3時間の還流では、血漿総ヘモグロビン値(フルオレン法にて測定)は30mg/dl以下と溶血は軽微であったが、4L/min、4時間の還流では溶血は高度であった。高度溶血の原因としては、流量増加によるチューブのバイブレーションなど回路自体の問題が考えられた。そこで、成ヒツジ5頭(平均体重47kg)を用いての溶血のin vivo評価を行った。開胸下、右心房脱血、頚動脈送血による部分体外循環を行い、PAD・CPを駆動した。PAD・CPは動脈カニューレから約50cmの位置に接続した。人工肺はメラエクセラン25Hを使用した。PAD・CP駆動によるチューブのバイブレーションは軽度であった。ポンプ流量3.0-3.6 1/min、(ポンプ回転数は3000-3200RPM)4時間の還流で、血漿総ヘモグロビン量は30mg/dl以下であり、溶血は軽微であった。また、血小板数、LDH値なども許容範囲内の変化であった。これらの結果より、本装置の臨床応用の可能性が示唆された。
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