Whole heartの低温保存に先立ち、単離心筋細胞の凍結保存実験において、適切な凍害保護液の作製について検討した。従来の細胞膜透過性凍害保護剤であるDimethgl sulfoxide(DMSO)には心毒性があると言われ、それのみでは長期心低温保存には不適切である。そこで細胞膜非透過性のTrehalose(TH)を添加することにより、DMSOの濃度を減少せしめ、かつ良好な凍結保護効果が得られるか否かを検討した。[I]胎生16-18日目のDDYマウスより胎児心筋を分離培養し、Programmable Freezerで-40℃まで凍結し、液体窒素(-196℃)に保存。凍害保護剤として10%DMSO単独および種々の濃度でTHを添加した。24時間の凍結保存後、解凍し、培養後24時間、48時間後の拍動を観察した。各群の拍動回復率、凍害保護液中に逸脱したCPK値などにより、心筋細胞障害の程度を評価した。各群のデータよりTHを添加することにより、DMSOの濃度を減少させることが可能であることが示唆された。[II]生後4日目のWister系ラット新生仔より心筋細胞を分離培養し、24時間後心筋細胞シートを形成し、拍動が見られたシャーレに凍害保護剤を加え[I]と同様に24時間凍結保存し培養を再開した。凍害保護剤は、10%DMSO群、10%DMSO+0.2MTH群、5%DMSO群、5%DMSO+0.2MTH群として、各群で再培養開始後の拍動回復率、拍動数回復率および凍害保護液中に逸脱してCPKを計測した。その結果DMSOの濃度を10%から5%に低下させると拍動回復はみられなかったが、THの添加により拍動回復率および拍動数回復率は増大し、[I]と同様の結論が得られた。
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