研究概要 |
当初の実験計画を若干変更し、実験的脳挫創に及ぼす人為的脳温変化の影響について、平成8年度に予定していた72-kDa heat shock protein(HSP72)発現による比較検討を平成7年度に行った。具体的実験方法として、Fluid percussionによる頭部外傷後、雄性Sprague-Dowleyラット(330-400g)を保温パッドを用いて37.0-37.5℃に維持した常温群と、外傷後15分より冷水灌流法にて冷却を開始し、外傷後150分まで直腸温、側頭筋温を30.0-31.5℃に維持した低体温群の2群に分けた。両群のラットを外傷24,48,72時間後、7日後に4%paraformaldehydeにて灌流固定しHSP72の免疫組織化学的染色、およびhematoxyline-eosin染色を行った。その結果、1.低体温群でHSP72を産生したラットの数は常温群に比して有意に少なかった。2.HSP72陽性の神経細胞およびグリア細胞は外傷脳の様々な領域(衝撃部皮質、皮質深部、傍矢状皮質、海馬、尾状核一被殻、中脳)に認められたが、低体温群のラットでは各領域のHSP72陽性細胞の数は常温群に比して有意に少なかった。3.両群ともに外傷後24時間でHSP72陽性細胞は最も多く認められ、以後時間の経過とともに減少した。以上のように頭部外傷後のHSP72の出現は外傷後の低体温により著明に抑制され、軽度低体温の外傷脳に対する保護効果が示唆された。現在、高体温下における実験頭部外傷後のHSP72の出現について常温群との比較検討を進めているところである。
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