(1)マウスメラノーマを用いた検討 脳血管内皮細胞培養上清を用いてmodified Boyden chamber methodにてマウスメラノーマ細胞の選別を行い、血管内皮細胞に対して高親和株、低親和株を樹立した。これらの腫瘍細胞をマウス頚動脈に注入した。細胞株の樹立に時間を要し、これを用いたin vivoの研究はいまのところpreliminary dataが得られているのみである。親株が頚動脈注入で脳実質転移を来さない細胞株(B16)を上記方法にて選別後に頚動脈注入を行ったところ、1匹ではあるが、脳実質に小転移巣を形成した。血管内皮に対する腫瘍細胞の親和性が臓器特異的転移形成に関与することを示唆するデータと考えられ、一層の検討を行う予定である。 (2)ヒトメラノーマでの検討 ヒトメラノーマ培養細胞(リンパ筋転移巣由来、脳転移巣由来)をヌードマウス大槽に注入したところ、一部の細胞株で頭蓋内に病変を形成した。ヌードマウスにおける異種(ヒト)腫瘍接種では腫瘍形成に時間がかかるため、まだ充分な結果の検討は行っていないが、脳転移巣由来の培養細胞では髄膜癌腫症に加え脳実質に浸潤性の腫瘍を形成、一方、リンパ筋由来の細胞株では髄膜癌腫症のみ形成するという傾向を認めている。こういった違いの生じる機序についてさらに検討を行っている段階である。また手術摘出新鮮腫瘍細胞をヌードマウス大槽に注入し、細胞株にみられた腫瘍細胞の脳実質への浸潤性の差が手術摘出新鮮腫瘍細胞でも認められるか否かの検討を行ないつつある。
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