研究概要 |
1.一酸化窒素合成阻害剤の梗塞体積への影響の温度依存性 ハロセン麻酔下にSprague-Dawleyラツト(300g)において、対側大脳皮質に温度プローブを挿入し、保温用ランプまたは冷却用扇風機にて脳温度を33℃(n=10)、37.5℃(n=10)または39℃(n=10)に維持した。その状態で田村のモデルに準じて中大脳動脈を閉塞をおこない、その5分後にL-nitro-arginine(LNA,lmg/kg,n=5)または同量の生理食塩水(n=5)を10分間で静注した。血管閉塞後24時間で断頭し、厚さ2mmの脳切片8枚をTTCにて染色し脳梗塞体積の測定をおこなった。その結果、正常脳温ではLNA投与群において生理食塩水投与群よりも脳梗塞体積が増大する傾向がみられたが、nが小さいため統計学的に有意ではなかった。この傾向は低脳温群および高脳温群でも同様であり、やはり統計学的に有意ではない梗塞体積の増大を認めた。 2.一酸化窒素合成阻害剤の虚血時脳血流への影響の温度依存性 ラットを小動物用脳定位固定装置に固定し、レーザードップラー血統計のプローブを大脳皮質背外側部直上に設置し、中大脳動脈閉塞前から閉塞後の2時間のあいだ持続的に局所脳血流を測定した。脳温度37.5℃では血管閉塞直後に定位的に定められた大脳皮質背外側部の局所脳血流は基準値の30%程度まで下降し、その後2時間のあいだ測定することが可能で、測定中はほとんど変化を認めなかった。温度を変化させたときの局所脳血流への影響はまだ結果がでていない。 以上が現在までに得た結果である。まだpreliminaryではあるが、1の結果から考えて一酸化窒素合成酵素阻害剤の脳梗塞体積への結果が脳温度によって影響を受けている可能性は少ないものと予想される。
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