脳での組織修復に重要な働きを持つと考えられている、マクロファージとアストロサイトを抗ED-1抗体、抗GFAP(glial fibrilary acidic protein)抗体を用いた免疫組織染色で同定し、その数や分布の変化を損傷後1、3、5、7、10、14日目に経時的に観察した。加えてこれらの細胞の増殖能を評価するために抗PCNA(proliferating cell nuclear antigen)抗体を合わせて用い、前述の抗体と共に二重染色を行った。損傷後1日目よりマクロファージは損傷部周辺に出現し、3日から5日目に数・分布ともに最大となり、7日目以降減少した。アストロサイトは同様に1日目より見られ、遅れて5日から7日目に最大となり、14日目でも維持されていた。抗PCNA抗体でみた増殖能はマクロファージが3日から5日目に約40%の細胞に見られたのに対し、アストロサイトは経過中数%に過ぎなかった。この結果から脳損傷後にBBB(blood brain barrier)を越えて遊走したマクロファージは局所でも増殖・増加したのに対し、アストロサイトは既存の細胞が活性化され、GFAP陽性に転じたと考えられた。この損傷局所での細胞変化にはサイトカインなどを介した情報伝達が関与していると推測されるので、次年度以降の研究はそれらを明らかにする方向へ進めていく。
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