研究概要 |
ラット実験てんかんモデルを用いて、生体内において脳組織の核磁気共鳴画像(MRI)・スペクトロスコピー(MRS)・ケミカルシフトイメージ(CSI)を非侵襲的に測定している。1995から1996年は、興奮性アミノ酸作動薬のカイニン酸、およびGABA阻害作用を持つビククリンを投与してけいれん重積状態を作成した動物において、以下の実験を継続して行なった。 1.MRI:カイニン酸投与群において、拡散強調1H-MRIを用いることによって、辺縁系に細胞内浮腫が出現すること、その辺縁系のなかにも細胞内浮腫がより強い領域が存在することを明らかにした。ここまでの成果は、スカンジナヴィア脳神経外科学会(1995年6月、レイキャビク)で報告し、American Journal of Neuroradiology誌(1995年6月号)上に発表した。さらにNMDA型、非NMDA型拮抗薬によって、拡散強調画像の局所的な変化が抑制されることを明らかにした。また、拡散係数を定量化した画像(ADC image)の描出もおこない、水の拡散状態の局所的な変化を脳割面上で明らかにした。結果の一部は、The Hippocampus:functionins and clinical relevance(Kato N,ed.1996)上に発表した。 2.MRS,CSI:1H-MRSを用いて、生体で脳内のN-Acetyl-Aspartate(NAA)と乳酸を中心に代謝指標の経時的変化を測定している。さらに、CSI上で、脳組織のpH、乳酸、NAAなどの化学シフト像を作製し、非侵襲的に経時的な変化を追跡している。ここまでの経過の一部は、滋賀医科大学雑誌(上、第18回ペンフィールド記念懇話会(1995年10月名古屋)において報告した。また、同じけいれん重積状態でも、カイニン酸とビククリンとでは、これらの代謝指標に大きな差異があることを見い出し、その原因について検索をおこなっている。結果をまとめて、日本てんかん学会(1997年9月)およびペンフィールド記念懇話会(1997年10月)にて報告する予定である。
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