研究概要 |
グリオーマの形質発現のうち幾つかは遺伝子発現あるいは染色体異常と関連するものと推察される。そこで、最初に、グリオーマでの染色体異常につき各種マイクロサテライト・マーカー[D9S54,IFNA,D9S171,D9S104,D9S165,D9S166]を用いて検討した。その結果、最近新たなる癌抑制遺伝子(p16)の存在で注目されている第9番染色体短腕のグリオーマにおける異常は、検索した症例の約84%に認められ、これまでの報告と比べその頻度は高かった。その理由は、マイクロサテライト・マーカーの感度が良いこと、および多数のマーカー(6個/染色体短腕)を用いたことによると考えられた。また、マイクロサテライト座位の異常は良性のグリオーマより悪性グリオーマに有意に多く認められ、グリオーマの悪性変化に関与している可能性が示された。次に、初発・再発例での第10番染色体の異常につき検討した。その異常は、glioblastoma(GB)で全例(100%)に、anaplastic astrocytoma(AA)で約50%に認められたが、一方、astrocytoma(As)では全く(0%)見られなかった。第10番染色体に異常のみられたAA例は再発時にはすべてGBとなった。とくに、10q23-25領域の異常がグリオーマの最悪性変化と関連している可能性が示された。また、ほとんどの例で再発時のマイクロサテライト座位の異常の蓄積がみられた。しかしながら、組織学的分類と生存期間とはよく関連していたが、第9および第10番染色体のマイクロサテライト座位の異常の程度と生存期間との関連は見出すことはできなかった。
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