研究概要 |
グルコーストランスポーターをはじめとする輸送体の研究が大きく進歩するとともに、細胞内情報伝達機構の研究基盤が整備され、脳血液関門の制御機構をtight junctionの形成と輸送体制御の両面から研究することが可能となた。 (1)in situ brain perfusion法をラット中大脳動脈閉塞モデルに適用して、in vivoにおける脳血管の糖輸送定数(Vmax,Kmax)の定量的解析を行い、虚血時における脳毛細血管内皮細胞のグルコーストランスポーターのdown regulationを生理学的に明らかにした。虚血時には神経細胞における糖代謝障害に加えて内皮細胞レベルでの輸送障害も存在することは、再還流障害の機序の理解にも重要な視点を与える。 (2)ラットの培養脳微小血管内皮細胞培養系による共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、高浸透圧溶液付加による一過性の細胞内カルシウム濃度上昇と回復の時間的経過を明らかにした。また、回復過程における細胞内カルシウムイオンのくみ出しがNA/Ca exchangerに依存することを明らかにし、Na/Ca exchangerを阻害することによる持続的な脳血液関門のmodulationの可能性を開いた。 (3)脳虚血・再還流による脳毛細血管内皮細胞障害は、脳血液関門の破綻を来すことによって血管原性脳浮腫をもたらす。脳血液関門の再酸素化による障害の主原因が内皮細胞自身から産生されるsuperoxideであること、また、内皮細胞により産生されるNOとsuperoxideにより形成されるperoxynitriteが再酸素化障害に関与することを明らかにした。この過程がカルシウムイオン依存性であることも併せて明らかにした。
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