現在までの研究成果について報告する。 ラットを用いて代表的な頭部外傷モデルである鉛玉落下による脳挫傷モデルにレシチン化SODを投与し、外傷直後、6時間後、3日後、一週間後のSODmRNAをnothern blotting法にて定量、また比重法にて脳水分量を定量し、非投与群との比較検討を行った。活性酸素のscavengerであるrecombinant superoxide dismutase SODについては、充分な治療効果を得るにはにはなんらかのdrug delivery systemの導入が必要であると考えられていた。レシチン化SODは、細胞膜親和性を高める目的でSODにレシチン誘導体を共有結合させた製材であり、良好な脳内分布及び血中半減期の延長が報告されている。研究の結果では、SODmRNAの挫傷辺縁部および遠位部での発現がみとめられ、レシチン化SOD投与により、辺縁部での脳水分量の減少と、遠位部でのSODmRNAの減少が認められた。このことより、外傷性脳浮腫の生成に活性酸素が関与していること、レシチン化SODの投与によりそれが抑制されること等の知見が得られた。 また我々はこれまでSOD投与との併用療法として低体温療法に注目し、その基礎実験として成猫を用いた脳虚血モデルにおいてその保護効果を確認している。頭部外傷における活性酸素の発生は外傷後に2次的虚血が関与している可能性がある。脳血流量など新たなパラメーターを加えて検討し、虚血モデルにおけるレシチン化SOD投与実験の結果と比較検討することも意義あることと考えられる。また頭部外傷における活性酸素による障害部位と、それに対する活性酸素消去剤の効果を検討するために、ラットの頭部外傷モデルを用いて、in situ hybridization法でSODmRANの発現の分布を検討する予定である。
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