研究概要 |
頭部外傷時の予後を左右する因子として組織の損傷時に発生する過剰な酸素種による障害はこれまでも注目されており、すでに米国においては重症頭部外傷患者に合成型活性酸素消去剤(superoxide dismutase SOD)の投与が試みられている。今後臨床的に合成型活性酸素消去剤投与の試みが増えていくことが予想されるが、実際に生体が産生する内因性SODの発現と投与される合成SODとの関係については未知であり、従ってSOD投与にあたって生体の必要量や、その投与の時期については未だ確立されていないことが多いのが現状である。そこで本研究ではラットの代表的な頭部外傷モデルである鉛玉落下による脳挫傷モデルを用いて実験を行い次のような研究成果を得た。 1.電子スピン共鳴法(ESR,electron spin resonance spectrometer)を用いて活性酸素種の一つであるOHラジカルの発生を測定することができた。さらにOHラジカルは細胞膜障害の指標となるMalondialdehyde(MDA)および、脳浮腫の進展との相関が認められ、OHラジカル挫傷後の脳浮腫への関与が示唆された。 2.従来より用いられているhuman recombinant SODに比べ細胞膜親和性の高いレシチン化SODを投与し、SOD活性の上昇期間の延長、脳浮腫の軽減を認めた。 上記の研究結果より頭部外傷後の細胞障害に活性酸素が関与することが明らかとなった。ESRは活性酸素の測定法として、臨床的にも種々の病態に応用可能な方法と考えられる。また、レシチン化SODの効果が明らかとなったことで、頭部外傷患者の治療法として、今後の臨床応用への発展が期待できるもの考えられる。
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