研究課題/領域番号 |
07671523
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
伊藤 治英 山口大学, 医学部, 教授 (90019927)
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研究分担者 |
藤澤 博亮 山口大学, 医学部, 助手 (50238565)
前川 剛志 山口大学, 医学部, 教授 (60034972)
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キーワード | 温熱療法 / 興奮性アミノ酸 / グルタミン酸 / 脳血流 / 興奮毒性 / ラット |
研究概要 |
温熱による脳組織障害の機序は未知の部分が多い。虚血性脳損傷における興奮性アミノ酸の神経毒性は既に確立された概念となっているが、温熱による脳損傷時にも虚血性変化が観察される。本研究では、温熱による脳損傷時の興奮性アミノ酸、脳血流、グルコース代謝およびセカンド・メッセンジャーシステムの変化について検討することを目的とした。本年度の実験計画はほぼ達成できたと考える。実験は成長雄ラットを使用した。温熱の誘導はまずフラッドランプによる脳表面加熱により行った。加温時の脳内アミノ酸濃度の変動は微小透析法により行った。細胞外液中のグルタミン酸濃度は、41℃加温では変化がなかったが、43℃加温では加温終了直後より上昇し、加温終了後60分には前値に戻った。45℃加温では加温中よりグルタミン酸濃度は前値の300%まで上昇し、この上昇は加温終了後も続いた。組織学的には、45℃群では著明な凝固壊死巣、43℃群では脳虚血に見られるような神経細胞、星状膠細胞の変化が観察された。次いで、ラット用に開発したラジオフリークエンシー(RF)装置による温熱誘導を行い、レーザー血流計を用いて加温前後の脳血流の測定を行った。41℃に加温された領域では脳血流は加温開始20分後に前値の2倍に達しその後前値に復した。43℃の領域では脳血流は加温直後に一旦前値の134%まで上昇したがその後減少し始め最終的に前値の30%となった。45℃の領域では脳血流は加温後直ちに著明に減少した(前値の13%)。本研究の結果から、温熱による細胞障害にグルタミン酸の神経毒性が関与する可能性が示唆され、また温熱による脳組織障害の機序において脳虚血が関与することが明らかとなった。今後は計画通り脳代謝の変化を検討する予定である。
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