目的:低体温の脳挫傷後の興奮性アミノ酸と脳血流への影響と、外傷後の低酸素状態に対する効果を明らかにすることを目的とした。 方法:成長雄ラットを使用し、正常体温(37℃)と低体温(32℃)の2群で実験を行った。脳挫傷は重量落下法により作成した。(1)脳挫傷後のアミノ酸濃度について検討した。脳血流は水素クリアランス法により、アミノ酸濃度は微小透析法により測定した。(2)動脈血中の酸素分圧が30-40mHgとなるよう60分間の低酸素負荷を行い、アミノ酸濃度を微小解析法により測定した。脳血流はレーザードップラー法により測定した。(3)重量落下法による脳挫傷を作成後低酸素負荷を加えた。脳血流はレーザードップラー法により、アミノ酸濃度は微小透析法により測定した。 結果:(1)脳血流は脳温正常群、低体温群ともに低下が見られたが、虚血閾値までは達しなかった。細胞外液中のアミノ酸濃度も両群とも上昇が見られたが、低体温群の方が正常体温群より高値であった。(2)低酸素負荷中に平均動脈血圧は著明に低下し、脳値流は上昇した。正常体温群では低酸素負荷中に細胞外液中興奮性アミノ酸は著明に上昇し、軽度低体温はこのアミノ酸上昇を完全に抑制した。(3)挫傷後の低酸素負荷の場合、正常体温群のおいて興奮性アミノ酸濃度は外傷後上昇がみられたが、低体温の方が濃度は高かった。正常体温群では低酸素負荷中にアミノ酸濃度の著明な上昇がみれれたが、低体温群ではこの上昇は抑制された。 考察:脳挫傷後の細胞外液中アミノ酸濃度上昇は脳虚血とは機序が異なり、低体温の効果はシナプス後細胞で進行する細胞障害過程の抑制が主体であると推定された。外傷時には低酸素状態が外傷の一次的損傷に悪影響を及ぼすことが知られる。脳挫傷後の低酸素負荷によるアミノ酸濃度上昇に対して低体温は著明な抑制効果を融資、低酸素による二次的損傷を予防することが期待される。
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