研究課題/領域番号 |
07671525
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
榊 三郎 愛媛大学, 医学部, 教授 (30116933)
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研究分担者 |
河野 兼久 愛媛大学, 医学部・附属病院, 講師 (60145076)
大田 信介 愛媛大学, 医学部・附属病院, 講師 (50194163)
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キーワード | くも膜下出血 / 脳血管攣縮 / 脳動脈 / 平滑筋 / Fos |
研究概要 |
実験的クモ膜下出血犬の脳底動脈を用いて、新たな細胞応答を必要とする際に発現するimmediate early gene産物の一つであるFos protein (Fos)の発現時期を指標にクモ膜下出血時の脳動脈における細胞傷害の時期について検討した。一回クモ膜下出血モデルにおける抗Fos抗体による免疫染色、Immunoblottingでは、クモ膜下出血作製から1時間後において、内皮及び一部の平滑筋細胞がびまん性に濃染され、細胞質と核にFosが存在しているものと考えられた。2時間後における免疫反応は主として内皮、平滑筋層とも斑点状に染色され、細胞質内のFosが核に移行したものと考えられた。二回出血モデルでは2回目のクモ膜下出血作製から1時間後で極く一部の平滑筋に淡い染色性を認めたが、2、3時間後ではどの切片の平滑筋細胞においても明らかな染色性は認めなかった。血管内皮においては2時間後でのみ、細胞質と核が染色された。また4日後、7日後、14日後の脳底動脈では全く染色されなかった。今回明らかになった一回目の出血後1〜2時間というFosの発現時期から推測すると、クモ膜下出血というinsult自体が新たなGene expressionを必要とする細胞傷害を脳動脈壁の内皮及び平滑筋の一部に与えていると考えられた。一方、細胞死を引き起こす二回出血モデルにおいては二回目のクモ膜下出血後にはFosの発現はほとんど認められず、一回目の出血とは事なり傷害に対する細胞応答が損なわれているものと考えられた。以上より、二回目のクモ膜下出血直後にはクモ膜下出血という傷害に対して細胞が応答できず、多くの平滑筋細胞が二回目のクモ膜下出血直後に回復不能な状態に陥り、やがて組織学的変化として現れてくるものと推測された。
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