研究概要 |
本実験では犬のモデルを使用した。Pentobarbitalで全身麻酔下、気管内挿管を行い人工呼吸器を接続。上矢状洞(SSS)およびその周辺の皮質静脈を十分に露出する。26G注射針を皮質静脈内に挿入、transducerに接続し静脈圧を持続的にモニターする。種々の測定値が安定した後、架橋静脈にクリップをかけ静脈圧の変化をみる。犬は麻酔覚醒後翌日まで状態を観察する。翌日に犬を安楽死させ、脳を取り出しスライスを作成し、梗塞、出血、浮腫等の出現を観察した。またhematoxylin and eosin染色を行い組織学的変化を観察しこれを4段階(stage0, I, II, III)に分類した。静脈閉塞時の静脈圧の上昇と組織変化の関係を検討した。 静脈圧の初期値は2-14mmHgであった。この中枢側をclipにて一時遮断すると静脈圧は1.4-25.5mmHg上昇する。組織変化と圧上昇との関係は、stage0の組織変化の半球では圧上昇は平均4.3mmHg、stage Iでは平均7.0mmHg、stage IIでは11.2mmHg、stage IIIでは17.5mmHgであった。圧上昇が著しいほど組織変化も強いとの結果が得られた。 静脈の側副路が十分で一時遮断による静脈圧上昇がすくない動物では梗塞は認めない。これに対し圧上昇が15mmHgを越えるような静脈では、切断によりその環流領域が種々の虚血性変化を来しているようである。この値は実際の脳外科手術時に静脈切断が安全に行えるかどうかの判断に極めて有用であると考える。
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