研究概要 |
本年度はラットにおいて,大脳皮質運動感覚野電気刺激による中枢神経内c-fos発現に及ぼす変化を検索した. 1.ラットの右オトガイ部にホルマリンを皮下注し,3時間後潅流固定とすると,右三叉神経尾側亜核(Vc)背内側部のI/II層にc-fos免疫陽性細胞が発現する.その他,脳幹:孤束核,最終野,網様核,蝸牛神経核,前庭神経核,青斑核,傍腕核,中心灰白質,背側縫線核,上丘,下丘,視床下部:室傍核,視索上核,諸視床下野,前脳:対角帯核,対座核,中隔核,扁桃核など,大脳皮質では,前頭前野,前頭葉,頭頂葉(体性感覚野),側頭葉,後頭葉,帯状回,辺緑下野,眼窩回,島回,梨状回などにc-fos発現を認める.対照として生理食塩水の注射ではVcにおけるc-fos発現は乏しい.但し,脳幹,大脳皮質では同様な発現が見られた. 2.ホルマリン,または生理食塩水を右オトガイ部に注射して,2時間目から1時間,左大脳皮質運動感覚野を電気刺激すると,VcのI/II層ではc-fos発現が抑制され,同じ注射後電気刺激なしで開頭処置のみの対照群に比し,有意に抑制が見られた.一方VcのIII/IV層ではc-fos発現の有意増加が認められた.脳幹,間脳では顕著な変化は明らかではなかったが,大脳皮質のc-fos発現は同側で強く促進され,対側とくに帯状回,前頭葉内側部,梨状回などでは抑制が見られた.また大脳皮質の電極接触部でもc-fosの発現は検出されなかった. 3.ラットにおける大脳皮質運動感覚野電気刺激の効果は,同側大脳皮質のc-fos発現促進,対側抑制,対側三叉神経尾側亜核I/II層抑制,III/IV層促進と判明した. 4.これらの鎮痛機構における意義に関してはさらに求心路遮断動物モデルでの検討を要する.
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