研究概要 |
研究目的:プロテインキナーゼ-C(PKC)はmalignant transformationに関与し、悪性新生物においてその活性亢進が示唆されている。本研究では、PKC活性抑制物質のヒト悪性神経膠腫細胞に対する抗腫瘍効果を解析し、臨床応用の可能性を探ることを目的とした。またPKC活性抑制物質と、TNFやインターフェロン(IFN)等のサイトカインとの抗腫瘍効果における相互作用も調べ、分子生物学的にそのメカニズムを解析した。結果:(1)我々が樹立した悪性神経膠腫細胞6株(クローン細胞1株含む)と、コントロールとして正常脳細胞1株のPKC活性を測定した結果、悪性神経膠腫細胞では正常脳細胞に比して有意に高いPKC活性を持つことがわかった。(2)PKC活性抑制物質としては,すでにその効果が証明されているStaurosporineと、臨床応用の可能性も考え人体への安全性が確認されているTamoxifenを用いた。これら両薬剤を悪性神経膠腫細胞に作用させた結果、6株中5株の細胞増殖能と浸潤能の両方を有意に抑制することを確認した。しかもこれらの薬剤は、正常脳細胞に対しては毒性を持たないことがわかった。(3)さらにTNF及びIFNに対し感受性を持つ悪性神経膠腫細胞株を用い、PKC活性抑制物質との相互作用を解析した結果、PKC活性抑制物質とこれらサイトカインは相乗的抗腫瘍効果を有することが示唆された。これは分子生物学的に、腫瘍細胞のサイトカインReceptorの発現増強によるものであることがわかった。(4)PKC活性抑制物質が、脳腫瘍細胞の各種癌遺伝子の発現に及ぼす効果に関しては現在解析中である。(5)以上の結果は、PKC活性抑制物質単独あるいは他のサイトカインとの併用療法の臨床的有用性の可能性を示唆するものと考えられた。
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