星細胞腫の生物学的特徴を把握するため、星細胞系中間径フィラメントの構成蛋白であるGFAPとビメンチンを対象として、中間径線維の重合、脱重合の調節機序に係わるリン酸化が星細胞腫において果たす役割を明らかにするとともに、星細胞腫において細胞骨格が増殖や細胞接着にどのように関与するのか検討することを目的とした。今年度は、悪性度の低い星細胞腫(astrocytoma Grade II)20例、悪性度の高いanaplastic astrocytoma(Grade III)10例とglioblastomall例の手術摘出標本を用いて、抗リン酸化GFAP抗体(pG2)による免疫組織化学的検討を行なった。GFAP陽性を示すRosenthal fiber(pilocytic astrocytomaなどに認め、変性構造物と考えられる)や星細胞腫組織は、pG2陰性であった。大多数がGFAP陰性を示す、悪性度の高い星細胞腫や膠芽腫で、5例のpG2陽性例を認めた。pG2陽性の分裂期細胞も認めたが、ほとんどのpG2陽性細胞は分裂間期の細胞であった。悪性グリオーマ組織内で高頻度にリン酸化GFAP陽性細胞群の出現を認めた。今後、グリオーマ細胞の浸潤部位での検討とビメンチンにおける解析を予定している。次に、中間径フィラメント構成蛋白の欠損細胞を作成し、その機能を解析するための予備実験を行った。正常構造のvimentin遺伝子から、制限酵素を用いた遺伝子組替えを繰り返すことにより、意図した部位で遺伝子を欠損させた2種のdominant-negative geneを得た。これらを、神経膠腫由来のU251-MG、SK-MG-1培養細胞にDEAE-dextran法でtransfectionした。現在、導入3日後に蛍光染色を行い、遺伝子導入によるvimentin発現の変化を検討している。
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