星細胞腫の生物学的特徴を把握するため、星細胞を中間径フィラメントの構成蛋白であるGFAPとビメンチンを取り上げて研究を行った。中間径線維の重合、脱重合の調節機序に係わるリン酸化が星細胞系腫瘍組織内において果たす役割を調査し、星細胞系腫瘍において細胞骨格が増殖や細胞接着にどのように関与するのか検討することを目的とした。悪性度の低い星細胞腫(astrocytoma Grade II)20例、悪性度の高いanaplastic astrocytoma(Grade III)10例とglioblastoma11例の手術摘出標本を用いて、抗リン酸化GFAP抗体(pG2)による免疫組織化学的検討を行った。GFAP陽性を示す星細胞腫組織やRosenthal fiberは、pG2陰性であった。腫瘍内の反応性星細胞以外は大多数がGFAP陰性を示す、悪性星細胞腫や膠芽腫の21例中5例が、pG2陽性であった。2例がglioblastoma、3例がanaplastic astrocytomaであった。pG2陽性の分裂期細胞も認めたが、pG2陽性細胞はほとんど分裂間期の細胞であった。ヒトグリオーマ培養細胞系においてはリン酸化GFAPが出現する分裂期に特異的であるpG2が、悪性星細胞腫組織内の腫瘍細胞群を染色した。pG2陽性を示した5症例の臨床記録から、手術放射線化学療法後の再発までの期間、生存期間を検索したが、pG2陰性の悪性星細胞腫・膠芽腫の症例群との差は認められなかった。従来のビメンチン抗体による星細胞腫の検索では非特異的所見が得られた。、最近当研究室で得られたリン酸化ビメンチンに対する抗体を用いた星細胞腫の検索を、蓄積した新鮮凍結標本を含めて、行っている。今年度も引き続き、GFAPあるいはビメンチンを欠損した培養細胞系の樹立への努力を続けている。
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