1.成犬の膝前十字靱帯をin situで凍結処理するための2重螺旋管式液体窒素プローブを開発した。このプローブの凍結処理効果を確認するため、成犬12頭を用いてこのプローブにより膝前十字靱帯を凍結した後に摘出し、組織学的観察および細胞培養法によって生存している細胞の有無を確認した。その結果全ての細胞が死滅しており、十分な凍結処理効果を持つことが証明された。 2.ビ-グルの成犬20頭について、膝前十字靱帯に、2重螺旋管式液体窒素プローブを用いたin situ凍結処理法を行って線維芽細胞を死滅させた後、生食で解凍した2群に分けた。いずれの群においても凍結処理後に前十字靱帯脛骨付着部を、脛骨骨幹近位前面の皮質骨を含む円筒形の骨片付きで遊離させ、第1群では前十字靱帯の脛骨付着部の骨片を元の位置に固定し、正常の前十字靱帯の張力へもどした(physiological tension group:P群)。第2群では脛骨遠位付着部の骨片を20ニュートンの力を加えて遠位方向へ牽引し、そこで遠位骨片を脛骨に固定した(high tension group:H群)。P群とH群における、凍結処理前十字靱帯の力学的特性と微細構造との変化の違いについて以下の知見を得た。 3.力学的試験においてP群とH群とを比較すると、術後6週では力学的試験においては両群の間に統計学的な有意差を認めなかった。一方、術後12週では凍結処理前十字靱帯の引っ張り強度、最大荷重およびmodulusについて、H群はP群より有意に低い値を示した。断面積、破断伸びには両群の間に統計学的な有意差を認めなかった。 4.微細構造解析を行った4頭においてP群とH群とを比較すると、術後6週でP群では凍結処理前十字靱帯の実質部表層に線維芽細胞の進入を認めたのに対し、H群では実質間隙に炎症性細胞の進入を認めた。術後12週では、P群で前十字靱帯の実質全体に線維芽細胞の存在を認めたのに対して、H群では前十字靱帯実質内に変性所見を認めた。
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