研究概要 |
実験には成熟日本白家兎36頭(20週齢、体重3-4Kg)を用い、下腿形態に駆血帯を用いて圧迫を加えた。駆血帯圧迫力の設定は40、80および120mmHgの三段階に設定した。一度の圧迫時間については2時間に設定し、1日当たりの圧迫時間は30分の間隔をおいて動物の飼育条件を阻害しない程度の1日2回、計4時間とした。駆血帯の圧迫力と圧迫日数をパラメータとして変化させ、以下の6群を作成した。1群:圧40mmHg、1日,2群:圧80mmHg、1日,3群:圧40mmHg、14日,4群:圧80mmHg、14日、120mmHg、14日、120mmHg、28日(各群6頭)。圧迫は左右いずれか一方にのみ加え、反対側は対照とした。圧迫スケジュール終了翌日に動物を屠殺し、下腿を解剖して両側のヒラメ筋および長趾伸筋を採取する。採取筋は湿重量を計測した後直ちに液体窒素で冷却したisopentaneで凍結した。これを10μm厚の連続凍結切片とした上でHE染色,ATPase,Gomoriトリクロム変法、チトクロームcオキシダーゼ染色を行なった。 1日圧迫群では浮腫とみられる筋重量の増加が若干みられるが組織学的には異常を認めなかった。慢性圧迫を加えた2筋において40mmHg圧迫群では明かな変化を認めなかった。しかし80と120mmHg圧迫群では、筋細胞直径の大小不同、筋線維壊死、間質の線維化、肥大したwhorled fiber、脂肪浸潤などの顕著な変化が全例に認められた。これらの病理変化はタイプ1線維を多く含むヒラメ筋に強く認められた。また、この変化は腰部変性後弯患者の腰部伸筋で観察した病理変化の特徴ときめて類似していた。現在これらの病理変化が不可逆的なものかどうかを検討中であるが、変化は筋細胞の壊死が主体であることから筋線維の多くは再生することができないと推察される。したがって現段階では、筋機能の変化を早期に検出し、筋の変性を予防する処置を行うことが重要と考えられる。
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