脊柱後弯症と股関節症の関連についてこれまでの筋電図学的ならびに生体力学的研究から立位姿勢時後弯症例においては、正常例より約3倍の力がかかっており、これが股関節症の発症因子あるいは増悪因子であるという仮説のもとに、摘出骨頭における病変部位や病理組織像の特殊性を検討した。その結果、以下のことが解明された。人工関節施行時摘出した末期関節症の骨頭8例の病理組織像は滑膜組織においては非特異的炎症像を呈し、骨頭の関節面には高度の軟骨変性が存在し、また荷重部に一致して軟骨下骨に骨壊死像を認めた。つまり関節症変化に加え壊死変化を伴った病態と考えられた。またこれらのX線の検討では長期間に及び増悪する関節裂隙の狭小化の後に、急に悪化し骨頭壊死像を呈する症例が多く、この増悪過程を病理組織所見と関連づけると関節自体の問題だけではなく他の因子の関与が考えられた。その一因子として脊柱後弯の存在を考えるが、その病変部位に関しては摘出骨頭に既に末期関節症の変化が存在するため、この病態に特有な病変部位の同定はできなかった。また後弯症の出現時期と関節症の急性増悪期との関連は今回の検討では不明であり、今後長期に渡るprospective studyが必要であろう。さらに、股関節におけるunit loadは25kg/cm2といわれているが、骨盤の後傾により荷重部の面積は減少しており、その結果unit loadは著しく増加していると考えられ、今後、三次元的解析を行い詳細な検討を行う予定である。
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