高齢化社会の到来とともに変形性股関節症は増加の傾向にあり、その病態の解明は重要課題のひとつである。本邦においては従来その原因は小児期の脱臼や亜脱臼によるものがほとんどであったが、最近老齢者においてはレントゲン上原因の不明な関節症が増加している。当科においては、1989年よりその原因として老化に伴う脊椎の変形特に後弯症に伴う骨盤の後傾により、骨頭被覆の減少しその結果関節症へと進行するいう仮説をたて研究を行ってきた。本研究の目的は股関節のレントゲン像を3次元的に解析し、姿勢と骨頭被覆の関係を解析し、姿勢の変化が股関節に与える影響を明らかにすることである。 対象 60才以上で腰椎後弯を呈するが正常股関節の症例20症例(正常群)を対照とし、腰椎後弯を呈しかつ臼蓋形成不全を認めない変形性股関節症症例8例(関節症群)を対象とした。 検討方法 これらの2群の立位骨盤側面像から骨盤傾斜角度を測定した。次に立位骨盤正面像から臼蓋形成不全の指標としてCE角を計測し、さらに小西が作成したcompute programACXを用い水平面での臼蓋骨頭被覆度を計算し比較検討した。 結果 1)骨盤傾斜角 正常群では18.5±7.5度、関節症群では22.5±6.3度であった。これらは当科において計測した正常姿勢群の傾斜角より有意に後傾していた。 2)CE角 正常股関節群では29.5±7.5度、関節症群では28.1±12.3度であり差を認めなかった。 3)骨盤被覆度 正常股関節群では75.1±6.3%、関節症群では71.3±10.5%であるが前方1/2に限って検討すると正常股関節群では67.3±8.2%、関節症群では60.1±11.5%であり減少していた。 考察 変形性股関節症の原因として多数の因子が考えられるが、本研究から姿勢の変化による骨頭被覆の減少がその一因となっていることが示唆された。またこれまでの我々の筋電図学的研究から後弯症例においては下肢筋、特に股関節周囲に存在する腸腰筋、四頭筋、大腿ニ頭筋の活動性の増大していることが判明している。従って、腰椎後弯症例においては骨頭被覆の減少による荷重面積の減少に加え、筋活動の増大に伴う関節合力の増加が変形性関節症の原因と考えられる。
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