1.腱板完全断裂患者16名18肩、対照として正常22名22肩の計40肩を対象とした。動作表面筋電図を用い、座位をとらせた被験者に、肘関節伸展位、前腕回内位の状態で肩甲平面上での挙上動作を、負荷無しおよび1kg負荷にて行わせた。筋電信号はディスポ-ザブル型の銀・塩化銀表面電極(ブルーセンサP-OO-S、ネディコスト社)で導出し、腰に付けた送信機(1429X、日本電気三栄)からデータレコーダー(OMNICORDER、日本電気三栄)に送り磁気テープ(DT-400、TEAC)に記録した。また挙上角度の測定は、肩峰と肘関節に付けた反射板の動きを筋電図と同期させたビデオカメラで撮影し、自動座標計測システム(Quick-MAG、応用計測研究所)を用いて、挙上30度、60度、90度、120度に至る時間を求めた。得られた筋電波形は分析ソフト(Hyper Wave、キッセイコムテック)を用い絶対値積分し、座標計測装置で求めた各挙上角度に至る時間とあわせ、各角度における積分電位を計測した。積分電位は最大収縮時の積分電位に対する百分率、%MVC(percent maximum voluntary contraction)で表示した。以上より上腕二頭筋の筋活動の増加の有無を調べ、比較検討した。 2.上腕二頭筋の%MVCは、正常肩では負荷無し、1kg負荷いずれも挙上角度にかかわらず10%未満であった。一方、腱板断裂肩では負荷なしで18肩中6肩に%MVCの増加(10%以上)を認め、1kg負荷では増加の程度が増した(p<0.05)。また、これらの%MVCは、挙上角度の増加に従い大きくなる傾向を示した。 3.腱板断裂肩において上腕二頭筋の筋活動の増加を認めた増加群6肩と、認めなかった非増加群12肩の背景因子を比較した。年齢、性別、平均罹病期間に有意差を認めなかったが、徒手筋力検査にて増加群が非増加群より肩関節外転、外旋筋力が小さい傾向にあった。これより上腕二頭筋が筋力の低下を補う動作筋として機能している可能性が示唆された。
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