研究概要 |
Tagging Snapshot法とは、MRIの高速撮像法を応用したもので、標識部を高信号で細い帯状のtagging bandsとして描出する撮像法である。標識から撮像の間に筋の収縮を行わせると、筋の移動はこのbandsの偏位・変形として表わされることになる。この研究の目的は、MRI Tagging Snapshot法により筋内部での筋移動の観察を行い、筋収縮及びその作用様式の解明の一助とすることである。 運動選手を対象に膝伸展位での大腿四頭筋の等尺性運動(四頭筋セッティング)及び膝伸展を伴う等張性運動を行わせ大腿四頭筋を、膝の屈曲運動を行わせ半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋・薄筋を、足関節の底背屈運動を行わせ下肢三頭筋・前脛骨筋を、それぞれ前述の方法にて撮像を行い、大腿骨長軸方向への移動量を画像解析装置を用いて計測し、統計処理を行った。 大腿四頭筋の等尺性運動では、中間・内側広筋の移動が大きいが,膝が屈曲位にあると中間広筋・大腿直筋の移動量が大きくなり、膝の屈曲角度によるコンポーネントの作用の違いがあることが確認された。また、表層や骨に近い部分では移動量が小さく、四頭筋腱に近い部分では大きかった。膝の屈曲運動では大腿二頭筋短頭・半腱様筋・薄筋は大腿四頭筋と同じように中枢方向へのみ移動をしたが、大腿二頭筋長頭・半膜様筋では中枢方向・遠位方向に移動する部分が存在する二方向性の移動を示した。中枢方向への移動量は半腱様筋で最も大きく、次いで大腿二頭筋長頭の中枢方向への移動が大きかった。下腿三頭筋はすべて中枢方向に移動し、ひらめ筋・腓腹筋外側頭・内側頭の間の移動量の差は認めなかった。Tagging Snapshot法により、生体内での筋収縮様式および筋内部での移動量の差が観察でき、その定量的測定が可能であった。
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