アンチセンスEWS/Fli-1遺伝子cDNAをサイトメガロウイルスのプロモーターを有するpC-DNAベクターに組み込みクローニングした。これをユ-イング肉腫細胞Tc-135Dにトランスフェクションし、ネオマイシン耐性株を10株得ることができた。このうちPCRにて明確なアンチセンスRNAの発現が確認できた3株に対しFli-1抗体で免疫沈降反応を行い、Fli-1蛋白の発現低下が認められた。pC-DNAのみを導入した細胞株に比較し、この3株の細胞増殖速度は遅く、soft agar assayにおいてコロニー形成能が低下し、ヌードマウスの造腫瘍性も低下していた。ユ-イング肉腫ではキメラ遺伝子EWS/Fli-1の発現が腫瘍発生に大きく関与し、その発現を抑制することにより、造腫瘍性が低下することが証明できた。この結果はキメラ遺伝子をターゲットにした遺伝子治療の可能性につながるものと考える。概ね当初予定していた計画通り研究が遂行できたが予算の関係上、EWS/Fli-1 mRNAのノザン解析、細胞増殖度アッセイの際のトリチウムサイミジン取り込み率の解析、AgNOR数の測定等は行わなかった。しかし、ジェファーソン癌研究所のDr.ReddyよりFli-1の抗体の供与を受けることができ、EWS/Fli-1キメラ蛋白の検出が可能となり、有益であった。
|