研究概要 |
60膝についてMRIを施行した.撮像は膝前十字靱帯や半月の信号強度の変化が最も反映しやすいと思われるプロトン密度強調像で行った.年齢構成は10,20,30,40,50,60,70歳代各々7,10,8,12,10,15,8膝で臨床的には愁訴を有していない膝であった.撮像時の膝肢位は伸展位,30度,45度屈曲位とした.前十字靱帯については膝伸展位では脛骨関節面に対して45度の角度をもって付着することが分かった.また前十字靱帯は屈曲を増すにつれて信号強度が低下することが分かった.これは靱帯の長さの変化による緊張で血行動態の変化することを反映しているのではないかと考えられた. 前十字靱帯の信号強度は年齢階層別で明らかな違いは認められず,同一年齢階層の中でもさまざまな信号強度の靱帯像を呈した.これは各個体がもつ靱帯の水分含有量の違いによるものであり,加齢には影響されないと考えられた. 半月については加齢にともない半月内高信号の頻度が増加したが,半月内高信号を呈する半月の組織学的所見(人工膝関節置換術で得られた半月標本)では膠原線維の乱れや変性所見がみられ,これらの変化にともなう半月内水分含有量の増加が半月MRI像に影響することが示唆された.また内・外側半月を前角,体部,後角に分けて検討した場合,内側半月後角は最も高信号出現頻度が高く,加齢の影響を受けやすい部位と考えられた.
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