研究概要 |
申請者等は,慢性関節リウマチ(RA)に対する将来への抜本的な遺伝子治療へ向けて基礎的,臨床的基盤にたった研究を目的として検討してきた。平成7年度以降の研究実績概要は以下のとおりである。 (1)レトロウィルスの代表的なものにHTLV-1,HIVの存在があり,またRAと類似の関節炎を発症することが知られている。我々はRA患者50症例について,その患者背景と臨床像について検討し,ELISA法によりEB,HCV,サイトメガトロの各ウイルスの抗体の有無を確認した結果,EB=60%,HCV=15%,サイトメガトロ=30%の感染率であった。 (2)ATL(成人T細胞白血病)に著増するインターロイキン2レセプター(soluble interleukin-2 receptor:sIL-2R)とRAの関係,とくにCD4亜分画との関係については,EIA法ならびにLeuモノクロナール抗体を用いて検索した結果,CD3・HLA-DR陽性率とsIL-2Rとの相関はr=0.420と弱いながらも有意(P<0.01)の相関を認めた。一方,suppressor・inducer細胞を反映するCD4・CD45RA^<(+)>とmemory T細胞を反映するCD4・CD45RA^<(-)>との比率とsIL-2Rの関係について検索したが有意な相関は得られなかった。しかし,これらの症例におけるリンパ球表現型間,すなわちCD4・CD45RA^<(+)>/CD4・CD45RA^<(-)>比とCD3・HLA-DR^<(+)>/CD3^<(+)>比ではr=0.424(P<0.01)と負の相関を示した。 (3)soluble CD8 antigen(sCD8)については,ELISAキット(CD8 TEST KIT)を用いて検索した結果,RA患者では平均286.1±110.9U/ml(健常者:184.8±45.9U/ml)で有意に高値を認めた。またCD3,CD4,CD8,CD3HLA-DRについてflow cytometryで検索した結果,CD3,CD8は負の相関を示し,CD3HLA-DR/CD3についても有意な相関は得られず負の相関を示した。以上の結果より,sIL-2RやsCD8 antigenの役割については,未だ明らかでなく,今後,臨床経過の推移に伴うCD8の変化を把握することが重要と考えられる。
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