内軟骨性骨化は成長軟骨や骨折の治癒機転でみられる重要な骨形成過程で、まず軟骨細胞によって軟骨が形成され、この軟骨が骨化するという2段階の過程をとる。本研究では内軟骨性骨化にm-カルパインがどのように関与しているかを解明する目的で、ラット肋軟骨から成長軟骨細胞を採取し遠沈管内高密度培養を行った。培養15日目以降に培養軟骨細胞はアルカリフォスファターゼ活性の増加を伴って肥大化し、培養21日目以降、軟骨基質の石灰化を生じた。細胞塊と培養液中のm-カルパイン活性は、培養軟骨細胞の分化に伴い経時的に増加した。細胞塊及び培養液中のm-カルパイン量は経時的にImmunoblotで増加し、免疫組織染色で軟骨細胞中のm-カルパインが細胞の肥大化に伴って経時的に増加することが観察された。軟骨細胞の肥大化が生じる培養15日目からカルパスタチンを投与すると、濃度依存性に細胞塊中のカルシウム含量が減少した。軟骨細胞が肥大化してない培養14日目と、軟骨細胞が肥大化し基質石灰化が生じている培養28日目の細胞塊から抽出したプロテオグリカンモノマーの組成を比較すると、軟骨細胞分化と共に分子量の大きいモノマーが減少していた。このモノマーの減少は、培養15日目からE-64cを投与することで阻害された。また培養15日目からE-64cを投与した細胞塊と投与しない細胞塊のプロテオグリカン重合体の組成を培養28日目の時点で比較すると、E-64c投与により分子量の大きい重合体が増加していた。m-カルパイン量及びその活性が軟骨細胞の分化に伴い増加することは、本酵素が軟骨細胞の分化と基質石灰化に関与することを示している。またカルパインの阻害蛋白であるカルパスタチンで基質石灰化が抑制されたことは、カルパインが軟骨基質石灰化を促進していることを裏付ける結果である。
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