研究概要 |
前年度に引き続き、腫瘍内侵潤TILの分離を施行した.前年度の精製されたサイトカインよりもピシバニールのほうが活性化能力が強いという結果に基づき、ピシバニールの腫瘍内局所投与を行なって腫瘍内のリンパ球侵潤をより活性化した上で分離する試みを施行していたところ、悪性黒色腫にピシバニールとフィブリンの混注を行った1例で腫瘍の消失がみられた.この症例は5年前に滑膜肉腫に罹患しており、両腫瘍の関連性が注目された.我々は昨年,滑膜肉腫に特異的な(X,18)の転座によって生じるfusion geneであるSYT-SSXを腫瘍特異的遺伝子発現として、RT-PCR法を使用して、11例の滑腫肉腫症例で同定、DNA配列を検討し、腫瘍特異抗原としてのT細胞の標的となっている可能性について報告したが、本年度はさらに、X染色体上の2つの転座部位であるSSX1とSSX2のどちらで転座が生じているかについても、PCR産物の制限酵素処理後の断片を比較して解析した.その結果、SSX2にて転座が生じていたのは、再発症例のみで、これらのsampleでは、Xと18番染色体の転座以外の染色体異常も多く観察され、より強い腫瘍の悪性化と相関があると考えられた.最近の報告では、このSSX2遺伝子は、悪性黒色腫において発現されるHOM-MEL-40という腫瘍特異抗原をcodeすることが明らかにされ、本症例はこの点および腫瘍特異抗原の発現において共通性を持つ可能性が示唆された.現在本患者のTILを分離、レパトアを解析中である.
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