研究概要 |
人の骨粗鬆症は、加齢、閉経、不動などによって生じる。その病態では、全身的には各種のホルモンが関与し、局所的には各種の成長因子、サイトカイン、基質蛋白などが作用している。そこで、実験的骨粗鬆症モデルラットを作成して基質蛋白のmRNAの発現を検索した。ウイスター系成熟雌ラットを用いて、卵巣摘出術と両側坐骨神経切除術を施行して実験的骨粗鬆症を作成した。経時的に血液の採取と肢骨の摘出を行った。血液はCa、P、アルカリ性フォスファターゼ、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼの濃度測定、ラディオインムノアッセイによるオステオカルシン濃度の測定を行った。摘出した肢骨を用いて二重X線骨塩量測定装置にて骨塩量の測定をし、ノーザンブロティング法によるmRNAの発現量の測定した。血清中のCa、P、AIP、TRAの濃度は変化しなかった。DXAによる骨塩量の測定では手術後8週で有意の低下をきたして、骨粗鬆化を認めた。血清中のオステオカルシン濃度は手術後2週から有意に増加した。骨粗鬆化のラットの後肢の骨組織内の細胞レベルでのオステオカルシンmRNA発現現量は、2週、4週と増加し、8週でプラトーとなった。さらに、ビタミンD3の効果を調べるために1,25(OH)2D3と新規に開発されたビタミンD3誘導体であるED-71の投与実験を行った。1,25D3およびED-71ともに骨塩量の減少を有意に抑制した。骨組織内のオステオカルシンmRNA発現量は、1,25D3およびED-71の投与で有意の減少を認めた。以上をまとめると、骨粗鬆症モデルラットの骨粗鬆化は1,25D3およびED-71の投与によって抑制され、その作用機序として骨芽細胞に対して直接的に作用してオステオカルシンmRNAの発現を減少することが明らかとなった。
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