研究の背景: 慢性関節リウマチは、人口の0.3%を占めるといわれるほど患者数が多いこと、最終的に身体障害者をもたらすこと、などから医療資源の問題としても重要視されつつある。しかし、その原因はいぜんとして不明のままである。現在においても、慢性関節リウマチの病因研究は免疫学的手法が主流であるが、われわれは分子生物学的手法を用いて従来の研究とは違った面からの解析を試みようとした。 研究デザイン: 慢性関節リウマチ患者に共通する抗原(慢性関節リウマチの病因!)が存在すると仮定する。すると慢性関節リウマチ患者は、共通してこの抗原に対する抗体を持つことになる。慢性関節リウマチの病因たる抗原は、主病変座である病的滑膜に存在する可能性が最も高い。よって、手術時に切除される病的滑膜を材料としてmRNAを分離、これでcDNAライブラリィを作成する。別の慢性関節リウマチ患者の血清を用いて、このcDNAライブラリィを免疫スクリーニングすることにより、前述の共通する抗原遺伝子を分離することができる。研究経過: 少なくとも5人の患者の病的滑膜の材料として、それぞれcDNAライブラリィを作成し、1回20万個平均のスクリーニングを10回以上くりかえした。陽性クローンとして分離精製したものは20個以上であり、最終的には塩基配列決定まで行った。 研究結果: 共通の抗原と思われる遺伝子の単離は失敗した。 この研究による結論: 慢性関節リウマチにおいて、病因とみなしうる共通の抗原は少なくとも関節滑膜では発現されていない。
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