研究概要 |
手術時に頚椎OPLLの組織を周囲の非骨化靱帯部を含めて採取,またコントロールして頚椎椎間板ヘルニア患者の後縦靱帯を採取した。OPLL5例,コントロール2例のパラフィン標本作成し,H.E.染色,アルシアン・ブルー染色,エラスティカ・ヴァン・ギ-ソン染色を行い病理組織学的に検討した。 OPLLの非骨化靱帯は,コラーゲン線維が粗でその配列は乱れており,アルシアン・ブルーで微慢性に薄く染まった事から細胞外基質の変性示唆された。そしてその中には,線維芽細胞様の紡錘形の細胞や軟骨芽細胞様の卵円形の細胞が多数存在しており,細胞の形質転換,即ち造骨形細胞への分化が起こっていると考えられた。骨化組織に隣接した骨化移行部には成熟,肥大あるいは変性した軟骨細胞が存在しており,主に内軟骨性骨化を介した異所性骨化機序が考えられる。これらの事実は我々がこれまで証明してきたOPLL患者由来の培養靱帯細胞での結果と合致している。 さらにこれらの組織においてBMPレセプターの発現を免疫組織学的に検討した。その結果,BMPタイプIA,IB,IIレセプターは骨化移行部の軟骨細胞のみならず,その周囲に存在する繊維芽細胞や繊維芽細胞様の紡錘形細胞あるいは軟骨芽細胞様の卵円形の細胞において発現が認められた。一方,コントロールの靱帯細胞ではBMPレセプターの発現は認められなかった。これらの事実は,OPLL患者の靱帯細胞が潜在的に高い骨誘導活性を有していることを示しており,遺伝子的背景を基盤に加齢変性などの環境因子の影響を受けながらこれらの細胞の形質転換が進行して行くものと推移される。そしてBMPは正常な骨形成のみならず病的異所性骨化においても重要な役割を果たしている事が示唆され,将来分子生物学的レベルで骨化を抑制すると言う観点からも多くの所見が得られたと考えている。
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