研究概要 |
手術時に頚椎OPLL患者の骨化組織を採取、またコントロールとして頚椎椎間板ヘルニア患者の後縦靭帯を採取し、病理組織学的および免疫組織学的観察を行った。その結果、OPLLの非骨化靭帯部には紡錘形細胞や卵円形細胞が、また骨化移行部には成熟・肥大軟骨細胞が存在し、内軟骨性骨化を介した骨化機序が考えられた。さらにこれらの細胞でBMPレセプター(BMPR)の発現を観察すると骨化移行部の軟骨細胞のみならず非骨化靭帯部の細胞でもBMPR-LA、-IB、-IIの発現が認められた。一方、これらの所見はコントロールの靭帯では認められなかった。これらの事実は、OPLL患者の靭帯細胞がBMPに対して高い反応性を有しており、造骨系細胞へと形質転換していることを示唆している。 さらに、骨・軟骨形成におけるBMP_sの役割を詳細に検討するためにラット骨折治癒過程と関節軟骨においてBMP-2/-4、BMP-7/OP-1とこれらのレセプターであるBMPR-LA、-IB、-IIおよびアクチビンレセプタータイプI、II(ActR-I,II)の発現を免疫組織学的に観察した。その結果、膜性骨化および内軟骨性骨化の様々なステージにおいてBMP_sとそのレセプターの発現が認められ、様々なレセプターの組合せにより、BMP_sの多様なシグナルを受けていることが示唆された。またラット関節軟骨でも、BMP-2/-4、BMP-7/OP-1とそのレセプターの発現が観察された。 この一連の研究によって、BMP_sとそのレセプターが生理的な骨・軟骨形成過程における様々な細胞現象において中枢的な役割を担っており、さらに病的異所性骨化であるOPLLにおいてもその骨化の発生および進行に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。またこれは、将来、異所性骨化の抑制における分子生物学的アプローチを行う上でも大変意議深い結果であると考える。
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