研究概要 |
Wister Rat(生後14〜16週,375〜423g,雄)を用い,全麻下に第8〜10胸椎の椎弓切除を行った。Blackらの方法に準じて,120gの重錘にて2分間第9胸髄を硬膜上より圧迫し,脊髄完全損傷モデルを作成した。 これらのモデルを損傷後,何ら処置を加えなかった対照群と興奮性アミノ酸の拮抗剤(MK801)を投与したMK801群にわけ,損傷30分後,6時間後,12時間後,24時間後,72時間後,7日後,14日後に,全麻下にホルマリンにて潅流固定を行った後,断頭瀉血した。損傷脊髄を含めた胸髄を一塊として摘出した後,パラフィンにて包埋した。損傷中心部と頭側10mmの部位をHema toxylin-Eosine(以下HE)染色,Nissl染色及びapoptosisの特異的観察法であるNick-end-label法にて染色した。 脊損6時間後のHE染色標本では,損傷中心部は,神経細胞の核及び細胞体とも崩壊する著明なnecrosisの所見が認められた。この損傷中心部にみられたnecrosisの所見は時間の経過とともに進行していった。 損傷中心部より頭側に10mmの部位では損傷6時間後まで神経細胞死はわずかしか観察されなかったが,損傷12時間後にはnecrosisとは明らかに異なる,Nissl小体が比較的保たれ,核が一様に濃染する神経細胞死の所見が散見された。この所見は損傷7日まで継続していた。 Nick-end-label法標本では,損傷6時間後までいずれの部位にても神経細胞の核は染色されなかったが,脊損後12時間後には神経細胞の核は発色していた。この所見は損傷後3日に最も顕著にみられ,損傷14日まで継続してみられた。 MK801群では,Nick-end-label法にて陽性の細胞数は,損傷24時間後と損傷3日後に有意に減少していた。本研究により,損傷12時間後より14日後まで損傷脊髄内のapoptosisによる細胞死が生じること,及びapoptosisの形成に興奮性アミノ酸が関与することが明らかにされた。
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