研究課題
骨折の治癒過程において仮骨の強度が非侵襲的かつ定量的に測定できれば、骨折後の治療時期に応じた負荷安全域を個々の症例に対して決定でき、最適なリハビリテーションを行なうための補助診断として有用である。実験的に仮骨の最終破断応力の約60%からアコースティックエミッション(AE)信号が発生することから、AE信号の発生し始める荷重(AE開始荷重)を測定することで骨折部の破断強度を推定できる。AE信号は仮骨の微視的破壊に伴って発生する音響パルスである。本研究では、創外固定で治療を行なっている患者のリハビリテーションにAE法を応用した。その結果AE開始荷重値は創外固定術施工後の期間に依存して増加したが、X線像とは必ずしも相関していないことが判明し、X線像の読影による荷重値の決定の不確実性を明らかにした。荷重値の決定はAE開始荷重値までに設定した。これはマイクロクラックの進展による疲労骨折を危惧したためである。再骨折を起こした症例は1例も認めず、個々の症例について最適なリハビリテーションが施行できた。また創外固定の抜去時期についてもAE開始荷重値が症例の体重以上となった時点に設定することで、定量的データから決定することができ、治療期間の短縮に有用であった。以上のことは、日本機械学会第4回バイオエンジニアリングシンポジウムで発表し論文とした。創外固定に使用しているピンを信号の導出子として利用したが、この場合ピンと骨との接合部から生ずる雑音を除去することが必要となる。雑音の除去はAE信号の位置評定を行なうことで可能となるため、位置評定の精度についての研究を行なった。その結果信号発生位置の決定精度はセンサー間の距離に依存することが判明し、同時に雑音と仮骨部からの信号が区別できない限界の距離が存在することがわかった。以上のことは日本臨床バイオメカニクス学会誌に発表した。
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